羅という織物

 東京国立博物館の平成館に於いては、「クリーブランド展」と併せて、「人間国宝展」も開催されている。会場内に入ると、人間国宝の創造的意匠はもちろんのこと、緻密さと緊迫感と情熱が感じ取られ、至極の芸術作品からは神々しさが放たれていた。 
 数々の作品の中から、「羅 ら、うすもの」という織物に心打たれた。何故ならば、「羅」という漢字は、森羅万象、とか、曼荼羅、そして、沙羅双樹という中で使われているので、非常に神秘的だからだ。さらには羅針盤という単語にも登場し、なんだか未知なる世界に導いてくれるような感じもして興味深い。
 展示されている「羅」は柿色であったが、一見、透明なビニール、あるいは、ナイロンや化繊にしか見えなかった。しかし、目を近づけてよく見ると、1ミリくらいの菱形模様が生地全体に織り込まれており、それはそれは見事であった。
 ネットで調べると、「羅」の織り方は4世紀に中国から伝来したとのこと。元々は、鳥を捕まえるための網のことを「羅」と言ったので、生地は網の目のようになっており、それが連続紋となって延々と織り込まれているそうだ。「羅」という意味は、実に深い。