大阿闍梨の酒井雄哉師の『一日一生』

大阿闍梨の酒井雄哉師が先月(9月23日)に逝去された。千日回峰行を1980年と1987年の2度に亘って達成された大阿闍梨に関しては、その精神の強靱さがどこにあるのであろうかと、常々、不思議に思っていたが、聞き書きしてまとめられた『一日一生』(朝日新書 2008年刊)を読んで、疑問がとけた。
 大阿闍梨は若い頃から歩くのがお好きであったようだ。東京で住んでおられた時、三鷹から日本橋まで、毎日、歩いて往復していたのを知ると、千日回峰行で毎日30キロ~70キロを歩くのは、その延長線上であったものと思われる。
 本の中でご自分の来歴をわかりやすく述べられているのを読んで、何事を成すにも、その前の準備段階が要ることをあらためて教えられた。ひたすら歩く。それを毎日続ける。師の言葉をお借りすれば、「毎日、くるくる、同じことを繰り返す」ことだそうだ。
 語学の勉強も同じ。毎日、こつこつ単語を覚えれば、小さな成果が得られるであろう。その小さな成果と成果をパッチワークの如く結びつけながら、日々、繰り返していけば、何かが見えてくる。見えなければ、見えるまでとにかく、くるくる、こつこつ、繰り返すしかない。