不思議な展開と縁

最近、古本市で、『フク・ホロヴァーの生涯を追って』(吉澤朎子著 草思社 2002年)という本を購入した。20世紀にチェコで暮らした福という日本女性の話が書かれている。裏表紙に、ヤン・レツルという人物の略歴が書かれており、その人が広島物産陳列館(原爆ドーム)を設計した建築家であることを知った。それだけではなくて、上智大学1号館(注:関東大震災で潰れる)も設計したことを知り、親近感を持った。
 ヤン・レツル(注:一般的表記は、ヤン・レッツェル)はボヘミア生まれのチェコ人である。ネットで検索していると、日本に関係あるチェコ人の一人として、アントニン・レーモンド(1888-1976)という著名な建築家が出てきた。彼はライトの部下として来日して以来、たくさんの建築物を残しているが、そのうちの一つが東京女子大学の礼拝堂、及び、東寮・西寮である。
 その東寮に私は3年間、住んでいた。しかし、1923年9月1日の関東大震災直前に竣工されたばかりの寮は、数年前に大反対のうちに解体された。いくら歴史的に価値があろうとも、その維持が難しいという理由で。
 何気なく買った一冊の古本から、まさか自分の学生時代の日々にまで戻っていくとは思いもしなかった。ネットのおかげである。